「自由研究的ビジネスのつくりかた」第1回 開催レポート/ワクワクの源泉を探り、仕事の主語を自分に引き戻す

武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパス内にあるコワーキングスペース「Ma」で始まった創業支援プログラム「自由研究的ビジネスのつくりかた」。2026年4月11日(土)、3カ月間にわたり5回開催される講座の第1回が「Ma」で開催されました。
今回は「自由研究的ビジネスのつくりかた講座」というタイトルのもと、“主語の回復”をテーマに実施。参加者が気になること、ワクワクすることはなにか。その源泉を探りながら、主語を取り戻すことを目指しました。

ビジネスと自分との関係をつくり直すプログラム

「自由研究的ビジネスのつくりかた」の第一の目的はスキルを学ぶことではなく、ビジネスと自分自身との関係をつくり直すこと。全5回の講座は、5つのPhaseをたどる構成になっています。

今回Phase1は「主語の回復」。やりたいことがわからない状態から、自分がなにに反応し、どんなことでワクワクする人間なのかを言語化していく段階です。Phase2は「問いの発見」、Phase3は中間発表を通じた「社会との接続」、Phase4は「持続可能性」、そして最後のPhase5では「ナラティブの提示」として、最初はうまく説明できなかったことを自分だけの言葉で語ります。同時に自分で企画したスモールプロジェクトの立ち上げ、またはプロジェクトについて自分の言葉で具体的に説明できるようになっていることを目指します。

「どうしても気になる」内発的動機を出発点に

冒頭、「自由研究的ビジネス」について「自分がなぜこれをやってみたいのかという内発的動機が出発点になります」と、本講座のメンターである酒井博基が説明しました。

「仕事をするうえで多くの人が経験するのは、利益が見込める、成長の可能性があるといった外的な理由を出発点とすることです。そうではなく、各自が興味を持っていること、気になることへの理解を深め、自分の言葉で語れるようになると、それが魅力あるビジネスの種になる。その研究を続けることによって知見が蓄積され、やがて価値が生まれ収益を得ることにつながる……そんなプロセスをたどるビジネスを、僕らは『自由研究的ビジネス』と呼んでいます」

酒井は続けて「研究は、文献を調べることや調査を行うことよりも、アクションリサーチ、つまりやってみて自分なりの知見を蓄えることを重視します」と語り、自由研究の手法として5つのSTEPを提示しました。

研究対象となる「自分がどうしても気になること」を探すのがSTEP1。STEP2では、発見した関心ごとに対して、アクションリサーチを試しながら問いを深めていきます。STEP3では自ら実践して蓄えた知見を言語化、抽象化。STEP4でそれらを持続させる方法を、自分が持つほかのスキルや他者との関係から探ります。STEP5は、収益化。ほかにはないユニークなポジショニングによって、自然と価値が生まれていくことを期待します。

語りながら自分のワクワクの源泉を理解する

今回は定員を上回る応募者のなかから、17名が受講することになりました。「選考が難しかったです。いろんな思いを抱えて応募いただいたことが、応募書類の文面から伝わってきました」と酒井。

まずは、1人1分で自己紹介として名前と現在の仕事、参加の動機を話してもらいました。受講者の職業はさまざま。歴史ある企業で長く働いている人や、仲間と会社やNPOを起こして運営している人、フリーランスのデザイナーやフォトグラファーもいます。

応募の動機については、まさに外部に出発点があるクライアントワークに追われがちで疲弊している、考えていることを形にできる環境や仲間を求めている、人生の転機を迎えて自分らしいプロジェクトを始めたいといった声が聞かれました。

受講者にはこの日の講座に向けて事前課題が出されていました。「自分がワクワクしたプロジェクトやサービス、プロダクト、ビジネス、企業、人の事例を3つ紹介してください」というものです。この事前課題について、同じテーブルの2人で交互にペアインタビューを行うのが最初のワークとなりました。

ペアインタビューで扱う事例紹介は、第1回のテーマである「主語の回復」のきっかけとなるものです。ペアインタビューでは、おもしろいと思った事例について詳しく聞くのではなく、その人がなにに反応し、ワクワクしたのか、それはなぜなのかを深掘りしていきます。

手振りを交えながら真剣に話す姿が見られ、時間が経つにつれてリラックスできてきたのか、だんだんと笑い声も聞こえてきました。各々が、より深いところからワクワクの源泉を手繰り寄せることができたようです。

話すことで見つける、言語化していなかった「beの肩書き」

2つ目のワークは、その人の「beの肩書き」を考えます。「〇〇にワクワクする〇〇(名前)です」というフォーマットに当てはめるべく、ペアの人と相談。ペアインタビューで洗い出されたワクワクの源泉から、要素を抽出し、抽象化する作業です。

最初に1人ずつ行った自己紹介は、自分がなにをしている人間かを知らせる、つまり「doの肩書き」でした。「beの肩書き」では、初対面の人に対しても自分のワクワクの源泉が伝わるような、ありたい姿を言語化していきます。

2つ目のワークが始まると、ますます話が膨らんでいく様子のペアや、考える時間を少し持ってから、また話し始めるペアも見られました。普段は曖昧にしている考えを言い当てられたのか、「恥ずかしいな」という声や、「腑に落ちた」といった声も。自分ひとりでは気づかないことが、誰かと話すことによってだんだんと露わになっていきます。

酒井は、「語ることは、自分を理解する機会でもあります」と誰かに話すメリットについてもコメントしていました。今回の受講者たちには、LINEのグループがつくられることになっています。今回行ったように1対1で話し手、聞き手として語り合う時間を受講者同士で設ける際にもLINEグループを活用してほしいと呼びかけられました。

「〇〇研究家」と表現する最初の一歩

そして3つ目のワークは、研究対象の言語化。受講者が現時点で考えているプロジェクトや研究が、自分のワクワクの源泉とどのようにつながっているかを確認します。ゴールは「私は〇〇研究家です」と名乗ることです。

「次回のプログラムは、先ほどのbeの肩書きと〇〇研究家を合わせることから始めます。たとえば僕なら、『ワクワクが立ち上がるプロセスでワクワクする、ナラティブ研究家の酒井です』といった感じ。次回までにLINEグループに投稿してください」と酒井。

「LINEグループに投稿」の言葉に小さくどよめきが起きたあと、3つ目のペアワークが始まりました。まずは応募段階で考えていたプロジェクトの概要を話します。そのプロジェクトは、今回抽出したワクワクの源泉とつながっているかを確認。つながっていないのであれば、その理由を考えたり、抽象度を変えたりしながら調整を図っていきます。なかには、ぴったりなテーマが見つかったのか、拍手が起こるなど終始和気藹々。各テーブルで穏やかな会話が続いていました。

2つのワークでたどり着いた「beの肩書き」と「〇〇研究家」。最後に、現時点での「〇〇にワクワクする〇〇研究家の〇〇です」をそれぞれA4の用紙に大きく書き、みんなで眺める時間を持ちました。メンターの河野奈保子がその一部を読み上げると、「おぉっ」と感心の声が上がる場面もありました。

「今回書いた内容がしっくりこないなら、もっとフィットする言葉に更新してもかまいません」と酒井。それはむしろ、理解が深まった証なのだといいます。「すでにぴったりだと思っている人いますか?」と問われると、6人ほどが手を挙げていました。

これから受講者のみなさんがどのように内発的動機に基づいたプロジェクトに辿り着き、形にしていくのか。その期待が高まるクロージングとなりました。

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