やりたいこと(do)を決める前に、どんな自分でありたいか(be)を整えるための連続講座「beからはじめるライフデザイン宣言」。第4回は、『beの肩書き』の著者・兼松佳宏さんをお迎えし、「私は、どんな在り方を大切にして生きたいのだろう?」というテーマでの講義とワークショップが行われました。
【ゲスト講師】
・兼松佳宏さん(『beの肩書き』著者)
【ナビゲーター】
・酒井博基/『ナラティブモデル』著者
・前田洋子/「ウェルビーイング100」編集長
「beの肩書き」はひとりで見つけようとしない
兼松さん:まずは僕の著書のタイトルにもなっている「beの肩書き」について説明します。
まず大切なのは、beの肩書きはいくつあってもいいということ。そして、僕自身「勉強家」を15年以上名乗ってきましたが、その意味するところは、ただ「勉強することが好きな人」から、「初めてのことに挑戦してそこから学んでいく人」に変わってきたように、beの肩書きは一度見つけたら終わりではなく、育っていくものだと思っています。

といっても、僕はbeの肩書きをつけるスペシャリストではありません。beがいかに自分にとってエネルギーをくれるものであり、自分のやっていることがワクワクするかを大事にしているということを伝えたいです。
ではワークを始めましょう。ここに職業名、つまり“肩書き”がたくさん書かれています。かつて憧れていたもの、一度名乗ってみたいもの、名前を見ただけで「こんなのもあるのか!」と思ったものなど、理由はなんであれ、とにかくワクワクしたものに個数の縛りなく丸をつけてみてください。
丸をつけるのは、5個でもいいし、30個でもいいです! 深く考えすぎないで大丈夫。とにかくワクワクしたものをピックアップしましょう。

ここで、大事なキーワードとして「ユーダイモニア」について説明させてください。
ユーダイモニアとは、哲学者のアリストテレスが「幸せには2種類ある」と話した概念のこと。というのも、「アニメが好きとか」「K-POPが好き」とか、そういう単なる名詞的な“好き”とか“幸せ”からはbeの肩書きはなかなか生まれません。それは、ユーダイモニアと対になるヘドニア(五感を通じて得られる短期的な幸福感)に近いと思っています。
それをただ受け取る、あるいは世間で流行っているから触れておこうと考えがちですが、ユーダイモニアはその逆。自分の可能性を最大限に引き出してくれる幸せのことを言います。「K-POPで踊るのが好き」とか、「アニメソングを歌うのが好き」とか、動詞的な“好き”とか“幸せ”には、その人らしさが出てくるんです。
大事なのは、ヘドニアが悪いわけではないということです。世の中に無数にあるモノ・コトに対して、“好き”だと心が反応してヘドニアになっているのはめちゃくちゃ尊いこと。まさに心が動いている証です。100あるヘドニアのなかから、なにかがユーダイモニア化する可能性もあるんですよね。好きなものはなにか、それらのなかからなにかがユーダイモニア化しそうかというのは、日常のなかで意識してもらえるといいかなと思います。今回は行いませんが、覚えておいてください。

次は、同じ机に座ったペアの人とのワークです。1分半の時間を設けますので、先ほどどんな肩書きに丸をつけたか、そして自分でも意外だったなと思う職業について発表し合ってみてください。
ポイントは、聞き手は話し手の表情や声に注目すること。なにを話しているときに表情が変わったとか、どんな言葉を大切そうに話しているのか、そういうことって自分では気づきにくいですよね。そこで、聞いてどう思ったかという感想ではなく、鏡役としてフィードバックしてください。
鏡役には、物事を見る枠組みや視点を変えて、別の意味づけや解釈をする心理学のテクニックであるリフレーミングの意味があります。beの肩書きで大切なことは、ひとりで見つけようとしないこと。最終的になにがしっくりくるのかは自分自身で選ぶものですが、選択肢は他者に広げてもらう。そうやって、自力と他力を行き来しながら自分らしさを見つけていくことが大切です。

肩書きからイメージする動詞を列挙
兼松さん:次に、特にワクワクした肩書きや、ビビッときたものをひとつ書いてみてください。
これも深く考えすぎないのが大切です。今日話していて一番よかったと思う肩書きを選んで、ぜひなにを選んだかをペアの人と見せ合ってください。みなさんは、どんなものをピックアップしましたか?
参加者1:いまの職業とは全然関係ないのですが、話していてテンションが上がったのはレーサーでした。
参加者2:大工を選びました。ふたりで話すときに、具体的にイメージできたと感じていて、小さいころはこれになりたかったんだと思い出しました。ペアの相手の方は、私がきっとこれ選ぶだろうなと思ったものを選んでいました。

兼松さん:次は個人ワークです。ひとつ選んだ肩書きに関連する動詞を挙げていってみましょう。
レーサーに惹かれたとしたら、レース中のことを想像したのか、レースに向けてのトレーニング中の光景をイメージしたのか。俳優でも舞台に立っているときなのか、セリフを覚えているときなのか、シーンはさまざまですよね。でも、どれもその人にとっては正解なんです。もしかしたら肩書きが被っている人もいるかもしれないけど、全然違うコーヒー屋さんのことをイメージしてもいいんです。とにかく思いつく限り、動詞を思い浮かべてください。
さらに、そのなかで最も充実感を得られるのはどのシーンなのかを想像してみてください。動詞のイメージをもうちょっと膨らませる形です。

ワクワクの裏にある“願い”
兼松さん:ここまでがウォーミングアップです。次は、“願いリスト”を使用したワーク。
みなさんは、NVC(ノンバイオレントコミュニケーション)という言葉を知っていますか? 1970年代に、アメリカの臨床心理学者であるマーシャル・B・ローゼンバーグによって体系化されたコミュニケーション手法です。
コミュニケーションのなかで、モヤモヤすることってありますよね。言葉の裏には、大切にしたい“願い”が潜んでいる。それがないがしろにされたと感じたときに抱くのが“モヤモヤ”という感情です。
この願いを満たさない限りは、永遠に表面的な解決にしか至りません。また違う願いが満たされなかったりして、まだまだ本質的な問題が解決しないので、お互いになにを願っているのかを知り合うことがとても大事なんです。これがNVCの基本原則。だから、「こうしてくれませんか」と投げかけ合うのが大切です。
みなさんが先ほど選んだメタファーとしての肩書きには、なんらかの願いが反映されているはずです。なぜなら、願いが満たされたときの感情がワクワクだからです。ワクワクしたのであれば、なにかしらの願いが反映されているんです。ということで、それを探しにいきましょう。
まずは願いリストを見て、先ほどの肩書きリストと同じように、気になるものに印をつける。そして、丸数字の右には、そこで挙げた願いをそのまま書き写す。矢印の先に“その心は”を自由に「〇〇したい」という願望の形で書いていく……最終的に一番大切なものとして出てきたものはなにか、ワクワクと対応している願いを見つけるというワークです。

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こうして自分の願いと肩書きを組み合わせることで、参加者の「beの肩書き」が完成。参加者はお互いのbeの肩書きについて紹介し合いました。その後、今回のワークの感想をペア間で共有し、この回は終了しました。
